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わきが・腋臭症

ワキガ(腋臭)の原因とは?遺伝・アポクリン腺の仕組みを医師が解説ワキガ(腋臭)の原因とは?遺伝・アポクリン腺の仕組みを医師が解説

本記事では、ワキガ(腋臭症)の原因やアポクリン腺の仕組みについて、遺伝との関係を中心に解説いたします。
ワキガのにおいは体質によるところが大きく、原因を正しく理解しないまま自己流のケアを続けている方も少なくありません。原因やメカニズムを知ることは、ご自身に合った対策を検討するうえでの手がかりになります。
この記事の要約

  • ワキガの原因とアポクリン腺・皮脂腺の仕組み
  • 遺伝との関係やセルフチェックの方法
  • 医療機関で受けられる治療の選択肢

気になる症状がある場合は、大阪・天六でワキガ(腋臭)のご相談に対応するかもがわクリニックなど、医療機関での相談も選択肢のひとつとしてご検討ください。

本記事は、形成外科専門医である院長・鈴木義久がこれまでの診療経験をもとに監修しています。正しい知識を得るための一助となれば幸いです。

ワキガ(腋臭症)とは?多汗症との違い

ワキガはアポクリン腺の汗の質に由来してにおいが生じ、多汗症はエクリン腺の汗の量が多い状態であるという両者の違いを整理したインフォグラフィック
ワキガとは、脇の下から特有の強いにおいが発生する体質のことで、医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれています。病気ではなく、体質の一種として捉えられています。
このにおいは、脇の下にある「アポクリン腺」から分泌される汗が皮膚表面の常在菌によって分解される過程で発生すると考えられています。においの感じ方には個人差があり、ご本人が気づきにくい場合もあれば、周囲の反応が気になり日常生活で悩まれる方もいらっしゃいます。

多汗症・臭汗症との違い

ワキガとよく混同される症状に「多汗症」があります。多汗症は汗の量が多いことを指す症状で、体温調節に関わる「エクリン腺」から分泌される汗が主な原因です。エクリン腺から出る汗自体には、においがほとんどありません。
一方、ワキガのにおいの元となるのはアポクリン腺から分泌される汗であり、汗の「量」ではなく「質」に由来する点が多汗症とは異なります。なお、ワキガの症状がある方は脇の汗の量も多い傾向があるとされており、ワキガと多汗症を併発するケースも見られます。

ワキガの原因はアポクリン腺・皮脂腺・常在菌にある

アポクリン腺の汗と皮脂腺の皮脂が皮膚の常在菌に分解されてワキガ特有のにおいが生じるという、3つの要因を示したインフォグラフィック

アポクリン腺とエクリン腺の違い

人の汗腺には、「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があります。
エクリン腺は全身に分布しており、主に体温調節のために汗を分泌します。分泌される汗のほとんどは水分で、かいた直後はにおいがほとんどありません。
一方、アポクリン腺は脇の下や耳の中、乳輪などの限られた部位に存在し、タンパク質や脂質、アンモニアなどの成分を含む汗を分泌します。この汗自体は分泌された直後は無臭とされていますが、においのもととなる成分を多く含んでいる点がエクリン腺の汗との違いです。

皮脂腺の分泌物と常在菌による分解

脇の下には、アポクリン腺のほかに「皮脂腺」も存在します。皮脂腺から分泌される皮脂も、ワキガのにおいに関与する要素のひとつと考えられています。
アポクリン腺からの汗や皮脂は、分泌された時点では強いにおいを発するものではありませんが、皮膚表面に存在する常在菌によって分解される過程で、ワキガ特有のにおい成分が生じるとされています。常在菌は皮膚の健康を保つために必要な存在であり、常在菌そのものが有害というわけではありません。

ワキガは遺伝する?ABCC11遺伝子と遺伝確率の目安

ABCC11遺伝子が耳垢のタイプやにおいの成分に関わり、片方の親から受け継がれることがあるなど、ワキガと遺伝の関係を整理したインフォグラフィック

ABCC11遺伝子とワキガ体質の関係

ワキガ体質には、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。
耳垢が乾いているか湿っているかは、ABCC11という遺伝子によって決まることがわかっています(Yoshiura et al., 2006)。
さらに、この同じABCC11遺伝子が、脇のにおいのもととなる成分の分泌にも関わっていることが報告されています(Martin et al., 2010)。東アジア系の方は乾いた耳垢・においが少ないタイプの遺伝子を持つ方が多く、欧米系の方は湿った耳垢・においが出やすいタイプの遺伝子を持つ方が多い傾向があるとされています(Martin et al., 2010)。

両親から子への遺伝の伝わり方

ワキガ体質は、遺伝の中でも「顕性(優性)遺伝」という、片方の親から受け継ぐだけでも体質が表れやすい形式をとることが多いとされています(Yoshiura et al., 2006)。そのため、ご両親のどちらかにワキガ体質がある場合、お子さまにも体質が受け継がれる可能性があります。
具体的な遺伝確率については、情報源によって数値にばらつきがあり、確かな根拠を確認できなかったため、本記事では明記しておりません。ご自身やお子さまの体質について具体的に知りたい場合は、医療機関にご相談いただくことをおすすめします。

耳垢のタイプでわかるセルフチェック

ご自身がワキガ体質かどうかの目安のひとつに、耳垢の状態があります。
耳垢が湿っている方は、乾いている方に比べて、においのもとになりやすい遺伝子のタイプを持っている可能性が高いとされています(Yoshiura et al., 2006)。
ただし、これはあくまで遺伝子型に基づく統計的な傾向であり、耳垢のタイプだけで確実にワキガの有無を判断できるものではありません。ご自身の体質について気になる場合は、セルフチェックのみで判断せず、医療機関にご相談いただくことをおすすめします。

ワキガになりやすい人の特徴

思春期以降に現れやすいこと、家族に体質の方がいる場合があること、体格や生活習慣が関わることなど、傾向が見られやすい人の特徴を整理したインフォグラフィック

発症しやすい年齢:思春期以降

ワキガの症状は、思春期以降に現れ始めることが一般的です。においのもととなるアポクリン腺は、思春期に性ホルモンの影響を受けて機能し始めるためと考えられています。

家族にワキガ体質の方がいる場合

ご家族にワキガ体質の方がいる場合、ご自身にも同じ体質が見られる可能性があります。これは、ワキガ体質に遺伝的な要因が関わっていることによるものです。

体格との関連

体格や生活習慣によっても、においの強さが変化する可能性があると考えられています。ただし、体格とワキガの関係については個人差が大きく、体格だけでワキガの有無を判断できるものではありません。

『診療の中では、ご本人が自覚されていないまま、ご家族が心配されて連れていらっしゃるケースもあります。体質は周囲の方が先に気づくこともありますが、治療を進めるには、ご本人が向き合い、納得したうえで取り組んでいただくことが大切だと感じています。ご不安な点があれば、まずは一度ご相談いただければと思います。』
かもがわクリニック院長 鈴木義久(形成外科専門医)

遺伝以外にワキガへ影響する要因

ホルモンバランスの変化や食生活、ストレス・発汗量など、においの感じ方に影響しうる要因を整理したインフォグラフィック

ホルモンバランスの変化

ワキガのにおいの強さは、体内のホルモンバランスの変化によって左右されることがあると考えられています。アポクリン腺は性ホルモンの影響を受けやすい性質があり、思春期や妊娠・出産、月経周期などのタイミングで、においの感じ方が変化する場合があります。
なお、これらのライフステージとにおいの変化との関連については、広く一般的に言われている内容であり、現時点で学術的に十分に証明されているものではありません。

食生活・ストレス・発汗量との関連

日々の食生活や生活習慣も、においの強さに影響を与える可能性があると考えられています。また、精神的な緊張やストレスがかかる場面では、発汗量が増える傾向があるとされています。
食生活や特定の食品がにおいに与える影響についても、経験的に語られることは多いものの、学術的に確立された知見ではない点にご留意ください。
ただし、これらの要因はあくまでにおいの感じ方に影響する可能性がある要素であり、ワキガ体質そのものの根本原因ではないとされています。生活習慣を見直すことで、においが軽減する可能性はありますが、体質そのものが改善することを保証するものではありません。

『遺伝的な体質が土台にあることは間違いありませんが、日々の診療では、季節の変わり目やストレスの多い時期に「においが強くなった気がする」というご相談を受けることも少なくありません。生活習慣がすべての原因というわけではありませんが、体調や環境の変化によって感じ方が変わることはあるという実感があります。気になる変化があれば、遠慮なくご相談いただければと思います。』
かもがわクリニック院長 鈴木義久(形成外科専門医)

ワキガのセルフチェック方法

特有のにおい、衣類の脇の黄ばみ、湿った耳垢など、ワキガ体質を推測するためのセルフチェックの目安をまとめたインフォグラフィック

においの特徴

ワキガのにおいは、人によって感じ方に幅がありますが、一般的には鉛筆の芯のようなにおいや、スパイスに似たにおいなどにたとえられることがあります。ただし、においの感じ方には個人差が大きく、これらの表現はあくまで一般的に言われている目安であり、学術的に定義された基準ではありません。

衣類の黄ばみなどのサイン

脇の部分の衣類に黄色っぽいシミができやすい場合、アポクリン腺からの分泌物が関係している可能性があります。アポクリン腺から分泌される汗には、タンパク質や脂質などの成分が含まれており、これが衣類に付着することで色素沈着のような変化が生じることがあると考えられています。
そのほか、耳垢が湿っている(湿性耳垢)ことも、体質を推測する目安のひとつとして知られています。
これらのセルフチェック項目は、あくまでご自身の体質を推測するための参考情報であり、確実な診断方法ではありません。気になる症状がある場合は、自己判断だけで済ませず、医療機関にご相談いただくことをおすすめします。

ワキガの治療法

発汗を一時的に抑えるボツリヌストキシン注射と、アポクリン腺を直接除去する皮弁法の手術という、主な治療法を紹介したインフォグラフィック

発汗を抑える治療(ボツリヌストキシン注射など)

ボツリヌストキシン注射は脇の発汗を一時的に抑える治療で、効果は数ヶ月程度とされ繰り返しの施術が必要です。多汗症治療としては保険適用となる場合がありますが、ワキガのにおいそのものを根本的に改善するものではないとされています。アポクリン腺への直接的な作用は乏しいとされており、においの軽減は主に発汗量の減少による副次的な効果と考えられています。
なお、副作用として内出血や腫れ、まれに頭痛やだるさが生じる場合があります。保険診療となる場合と自由診療となる場合があり、費用は診断や治療内容によって異なりますので、診察時にご確認ください。

手術による治療(皮弁法の場合)

わきの皮膚をシワに沿って切開し、皮膚をめくって直接目で確認しながらアポクリン汗腺を切除する方法を「皮弁法(剪除法)」といいます。
手術時間はおおむね30分〜1時間程度で、局所麻酔で行われることが一般的です。
術後は腫れや内出血、痛みなどが生じ、一定期間ダウンタイムが必要です。腕の動きに1週間ほどの制限がかかります。傷跡が残る可能性、まれに術後の皮膚の拘縮(こうしゅく)などのリスクも伴います。
保険診療での治療となります。費用の詳細については診察時にご案内いたします。

ワキガに関するよくある質問

自然に治るか、何科を受診するか、制汗剤で不十分なとき、遺伝がなくてもなるかなど、ワキガに関するよくある質問と回答をまとめたインフォグラフィック

Q1. ワキガは自然に治りますか?

ワキガ体質は生まれ持った体質によるところが大きく、自然に治るものではないとされています。においが気にならなくなる場合もありますが、これは体質が改善したというより、感じ方や生活環境の変化による影響が大きいと考えられています。

Q2. ワキガは何科を受診すればいいですか?

ワキガは形成外科や皮膚科で相談できます。事前に医療機関のホームページなどで、ワキガの診察や治療に対応しているか確認しておくと安心です。

Q3. 市販の制汗剤だけでは効果を感じられない場合、どうすればよいですか?

市販の制汗剤やデオドラント製品で改善を感じられない場合や、においが気になり日常生活に影響がある場合は、医療機関での相談も選択肢のひとつです。当院では制汗剤に関するご相談は承っておりませんが、発汗を抑える注射やアポクリン腺の切除手術など、医療的な治療についてご案内しております。

Q4. 遺伝がなくてもワキガになることはありますか?

ご家族にワキガ体質の方がいない場合でも、ワキガの症状が見られることはあるとされています。体質の現れ方には個人差があり、遺伝的要因だけがすべてを説明するものではないと考えられています。

まとめ

ワキガはアポクリン腺の汗が分解されて生じ、ABCC11遺伝子など遺伝的要因が関わること、感じ方には個人差があり気になるときは医療機関に相談するとよいことなど、記事の要点をまとめたインフォグラフィック
ワキガ(腋臭症)は、脇の下にあるアポクリン腺から分泌される汗が、皮膚表面の常在菌によって分解されることで発生する体質です。ABCC11遺伝子が関与していることが学術的に報告されており、遺伝的な要因が体質に影響すると考えられています。
においの感じ方には個人差があり、生活習慣やホルモンバランスの変化によって変化することもあります。セルフチェックだけで判断が難しい場合や、日常生活に影響を感じる場合は、自己判断で抱え込まず、医療機関にご相談いただくことをおすすめします。
治療法には、発汗を抑える注射や、アポクリン腺を直接除去する手術などがあります。発汗を抑える注射はエクリン腺(汗の量)に作用するものであり、においのもととなるアポクリン腺そのものへの効果は期待できません。においの根本的な改善を希望される場合は、アポクリン腺を直接除去する手術が選択肢となります。医師との相談のうえで、ご自身に合った方法を検討することが大切です。

鈴木義久
この記事の執筆・監修者

院長 鈴木義久

かもがわクリニック院長。京都大学医学部卒業・医学博士。京都大学大学院医学研究科形成外科診療科長、滋賀医科大学形成外科学講座初代特任教授などを歴任。形成外科専門医として粉瘤・ワキガ治療を専門とし、保険適用での日帰り手術に対応。「患者さんの日常を取り戻すこと」を使命に、大阪・天六で地域医療に従事している。

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